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フリーランス新法の実務対応

法務コラム

フリーランス新法の実務対応

仲野裕美弁護士

1 フリーランス新法が施行

 2024年11月1日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆる「フリーランス法」が施行されました。
 SES契約は、契約類型としては準委任契約または請負契約に該当します。これらの契約は、時間ではなく業務内容に応じて対価を得る点で雇用契約とは異なります。また雇用契約と比較して、期間を自由に設定することができる、社会保険関係の手続きが不要となるなどの利便性があります。

<フリーランス法>
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025

<公正取引委員会 特設サイト>
https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/

 フリーランス法は、下請法類似の構造ながら、適用対象となる特定受託事業者に資本金要件がなく、士業や個人事業主も対象となるなど、独自の仕組みを有する法律です。本稿では、直近の相談事例を踏まえ、最低限、行っておきたい実務対応について解説いたします。

2 規制の概要

 フリーランス法(以下「法」といいます。)の規制において、特に重要と思われるものは以下の7点です。

(1)取引条件明示義務(法3条)
・業務の内容
・報酬の額
・支払期日
・発注事業者/フリーランスの名称
・業務委託をした日
・給付を受領/役務提供を受ける日
・給付を受領/役務提供を受ける場所
・(検査を行う場合)検査完了日
・(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項

(2)期日における報酬の支払義務(法3条)

(3)7つの禁止行為(法5条)1
・受領拒否
・報酬の減額
・返品
・買いたたき
・購入・利用強制
・不当な経済上の利益の提供要請
・不当な給付内容の変更及び不当なやりなおし

(4)募集情報の的確表示義務(法12条)

(5)育児介護等と業務の両立に関する配慮義務(法13条)2

(6)ハラスメントに係る体制整備義務(法14条)

(7)中途解除等の事前予告・理由開示義務(法16条)2

3 まず行うべき実務対応について

 対象となる取引がある企業においては、まずは取引条件を明示し、明示したとおりの取引を行うことに取り組むことをお勧めしたいと思います(上記(1))。
 また、報酬は給付の受領日から60日以内のなるべく早い日に支払うよう、徹底することが重要です。
 さらに、6か月以上の業務委託の場合、フリーランスとの契約書に、例えば「10日前に予告すれば中途解約ができる」と記載されていたとしても、30日前に書面、FAX、メール等により予告しなければなりません。
 例えば下図のように、クライアントから受けた業務を、自社で受託するとともに一部フリーランスにお願いするような場合、クライアントと自社との契約が30日前までの通知で解除できるようになっている場合、フリーランスへの連絡が間に合わなくなる事態が予想されます。そこで、このような企業においては、フリーランスとの契約の見直しに加え、自社がクライアントから受注する契約において中途解約条項が十分余裕をもった事前予告により行われるように定められているか、チェックすることが有益であると考えます。

コラム3_挿入図

<参考情報>

 法律説明資料(内閣官房新しい資本主義実現本部事務局・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省作成)
https://www.mhlw.go.jp/content/001270862.pdf

 Q&A(厚生労働省作成)
https://www.mhlw.go.jp/content/001179815.pdf

以上


1 1か月以上行う業務委託を依頼する場合のみ対象
2 6か月以上行う業務委託を依頼する場合のみ対象